この日に盛り上がったトピックがいくつかあって、そのうちの1つが私たちの主食「稲」と大正13年に山形鶴岡で描かれた稲作年鑑でした。今回は稲について語られたことについて。

2025年3月、明治学院大学で開催した学校地球暦研究会「◯クエスト」にて、地球暦考案者の杉山開知さんと&明治学院大学の渋谷恵さんとお話した内容をもとにした記事です。

陽の光に反応して育つ「稲」

杉山:最近稲に注目してるんだよね。国の花とか木とかあるけど、日本の国の植物って言ったらやっぱり「稲」なんじゃないかなって。

衣食住で、一番僕たちに直結してるじゃない?「稲の生育=1年=円(暦)」という意味でも1サイクル。僕たちの文化にものすごく連動してて、お米を育てるっていうことから始まり、起点になっているんだよね。それから稲って面白くて、地域差と品種がすごくいっぱいある。稲だけで40種類とか育ててる人いるんだよ。

渋谷:顔も違うよね。味も時期もね。

杉山:そうそう。育て方も色々で、年に1度田植えする種類のものもあれば、多年草としてほっといても生えてきて育つ種があったり、適当にまいて勝手に育つ種類とか。そうかと思えば人間が手をかけてるパターンもあるし。

カム:多年草みたいに育つのや適当に蒔いて育つのは原種に近いのかな?

杉山:そうだね原種に近い。それから、日本のお米って“短日植物”なんだよ。これは日照時間が短くなることで反応する植物のこと。稲の他にもコスモスや麻もそう。

*短日植物とは夏至から冬至までの期間=日に日に昼の時間が短くなる(夜の時間が長くなる)頃に花をつける植物のこと。

カム:じゃあ、逆に太陽の長さに関係ない植物もあるってこと?

杉山:そう、短日じゃない植物もたくさんあるよ。でも稲は代表的な短日植物。夏至まではどんどん成長する。でもね、夏至を過ぎて日が短くなってくると、急にモードが切り替わるんだよ。“あ、今だ”って植物が反応するの。

*短日植物とは逆に、冬至から夏至までの期間=日に日に昼の時間が長くなる(夜の時間が短くなる)頃に花をつける植物のことを「長日植物」といいます。

渋谷:へえ、それってすごくドラマチックだね。

杉山:地球暦を見るとわかるけど、夏至から10度手前に入梅っていう位置があるでしょう?で、10度後のところに半夏生が来るでしょう?

入梅とか半夏生って24節気に加えたオプションで雑節っていうんだけれど、ここは光の変化量の見極めのところなのよ。だから遅くとも入梅ぐらいまでの間に田植えしないといけないよね。一番遅い田植えの品種ってだいたいここら辺なの。

夏至を超えて半夏生。10度違うと全然違うわけ。短日植物にはそれがわかるの。

夏至まではぐんぐん育っていくんだけど、夏至を迎え日が短くなってきたなって感じ取ると、一気にフォーメーションを変えるの。今まで青々と茂ってたのが生殖成長に変わっていった時に、植物としての形態も全然違うでしょう?花が咲いて結実に向かっていくっていう。メタモルフォーゼみたい。

カム:近くに田んぼがあって、稲の生育を見ながら過ごしていると、夏至のあたりの光の変化を感じ取りやすくなるかもしれないよね。

今回の記事では、稲の成長と日照についてがテーマでした。

植物の成長を見ているだけでも、日照の変化がわかるんですね。地球暦を暮らしに取り入れるようになって15年。暦の上での時間の動きと周りの自然の変化を見比べながら、何となく、暦の位置と季節感が繋がってくるようになってきたように思います。日々のことに忙しくなっていると、空を見たり自然を感じたりする余裕がなくなってしまうけれど、深呼吸をしつつ自然の変化に耳を澄まし、時間や季節の巡りを感じとれる感性でいたいなあと思いました。

次回は大正13年の稲作便覧と、地域で記録する大切さについてお届けする予定です。

杉山 開知(すぎやま かいち)

地球暦考案者 / 静岡市在住

2004年から本格的に古代の暦の伝承と天体を学び、2007年 太陽系を1兆分の1に縮尺した『太陽系時空間地図 』を考案し地球暦と名付ける。天文、農業、教育など多分野の研究者。日本暦学会会員。

渋谷 恵(しぶや めぐみ)

明治学院大学心理学部教育発達学教授

比較・国際教育学とホリスティック教育の研究・実践を重ねている。共著に『多文化社会に応える地球市民教育』(ミネルヴァ書房)、『多様性を再考するーマジョリティに向けた多文化教育』(上智大学出版)など。港区国際交流協会代表理事や文部科学省外国人児童生徒教育アドバイザーとして、学校や地域での多文化共生の実践にも携わる。

「自分とつながる・人とつながる・世界(宇宙)とつながる」というテーマを軸に、地球暦の視点を教育や生涯学習に取り入れる「学校地球暦プロジェクト」や「わたしの地球暦クエスト」を展開する一方、OHカード・ジャパン代表としてメタファーカード(OHカード)を使った探求と共有の場づくりなどにも力を注ぐ。Dayaとの共著に「OHカードから広がる世界 歩き方ガイドブック」。

おすすめの記事