稲の生育の話から、以前に渋谷さんが大正13年「山形県藤島町の稲作便覧」の情報を、地球暦の上に記載し直した「MYクエスト暦」に話が展開していきました。

2025年3月、明治学院大学で開催した学校地球暦研究会「◯クエスト」にて、地球暦考案者の杉山開知さんと&明治学院大学の渋谷恵さんとお話した内容をもとにした記事です。

レシピのないレシピ地域ごとに受け継いでいくこと

渋谷:前に作った稲作便覧(大正13年山形県藤島町 高月美樹氏所蔵)を見てるんだけど、二十四節気だけじゃなくて、やっぱり入梅と半夏生とか書いてあるんだよね。それは、稲の生育のためには大事なポイントだからなんだね。

これがその、大正13年の稲作便覧。

渋谷:稲作をするのに、いつ何しましょうというのが記載されているのだけれど、円形で記されてて面白いの。二十四節気とか昔の祝日とか入っていて。いつ何しますよ、この時期は何しましょうというのが書いてある。円感覚だったんだよね。

これだと読みづらいから、文字起こして地球暦に置き直したのがこちら。

渋谷:時間の経過は、元の便覧だと右回りに一年が描かれているのに対して、私がつくったものは地球暦なので左回りに一年。

杉山:こういう記録ってさ、百年後の誰かが見た時にすごい貴重。なんか地球の記録じゃない?これがあるから、大正時代の山形鶴岡の田川群っていうところの稲作のことが今でもわかる。だから、例えば僕の住んでいる静岡でも、この地域ではこう育ててたみたいな稲作の記録を取っておくのすごい大事じゃないかなと思っていて。

しかも、この便覧が描かれた時代って、灌漑設備をして大型の農業になってくる一番走りの時期だったんだよね。

渋谷:確かに。鶴岡で関係者の方に話を聞いたとき、新しい農法とか新しい品種の研究開発が進んでいく中で多分生まれてきたんでしょうねって。何気なくこういうものがあったわけじゃなくって、その残された理由としては変化期だったから。

杉山:そうそう、そういう時期。その後も、従来の方法で育て続けていたならこういう便覧をつくる必要なかったのかもしれないけれど、新しい就労者とか新しい技術とかが入ってきたから、書いて後世に伝えなきゃいけないっていうこともあったと思う。

その農法の変換期だからこそ、一緒に農作業しながら口だけとか体で伝えるだけじゃなくて、文字でみんなに伝える必要があったのかもしれないね。

渋谷:親から受け継いでやっている農業から変換する時期だからこそ、いつ何々しましょうっていうことの見取り図が作られた。親から習う料理に、レシピに載ってないレシピってあるじゃないですか。単なる記録ではなくて・・なんだろう・・教育用に作られてるんだよね。実はそれ。

ただ、何をするっていうマニュアルでもあるけど、やっぱ今話してて、この便覧この時期に植物がメタモルフォーゼするのをイメージすると、なんかすごい。

カム:リアルに面白い。

杉山・渋谷:リアルでしょ?

カム:短日植物のこととか、稲の生育、記録やその背景にあることを聴いて見ると、日照や時間感覚、植物の変化、時代に対する興味が全然変わってくる。

杉山・渋谷:すごいドラマだよね。

稲が陽の光に反応して育つというお話から、1日の中でも午前と午後では光の働きが異なるという話へと展開していきました。北海道十勝にある、共働学舎新得農場の宮嶋さんに伺ったお話がとても興味深いので、次回ご紹介します。

杉山 開知(すぎやま かいち)

地球暦考案者 / 静岡市在住

2004年から本格的に古代の暦の伝承と天体を学び、2007年 太陽系を1兆分の1に縮尺した『太陽系時空間地図 』を考案し地球暦と名付ける。天文、農業、教育など多分野の研究者。日本暦学会会員。

渋谷 恵(しぶや めぐみ)

明治学院大学心理学部教育発達学教授

比較・国際教育学とホリスティック教育の研究・実践を重ねている。共著に『多文化社会に応える地球市民教育』(ミネルヴァ書房)、『多様性を再考するーマジョリティに向けた多文化教育』(上智大学出版)など。港区国際交流協会代表理事や文部科学省外国人児童生徒教育アドバイザーとして、学校や地域での多文化共生の実践にも携わる。

「自分とつながる・人とつながる・世界(宇宙)とつながる」というテーマを軸に、地球暦の視点を教育や生涯学習に取り入れる「学校地球暦プロジェクト」や「わたしの地球暦クエスト」を展開する一方、OHカード・ジャパン代表としてメタファーカード(OHカード)を使った探求と共有の場づくりなどにも力を注ぐ。Dayaとの共著に「OHカードから広がる世界 歩き方ガイドブック」。

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