鉄は、ものすごく便利で、人はいろんな道具を作れるようになった。産業革命をもたらした蒸気機関は鉄で出来てる。だけど、その便利さの裏には、生命を削る側面があるんです。鉄ってのはね、身体からマイナス電子を奪う。つまり、免疫力を落とすってこと。

今の都会の暮らしは、電磁波だらけで方向感覚が狂ってしまう。携帯やパソコンなどの電磁機器の近くに、方位磁石を置いてみるとわかる。針がぐるぐる回って、北を示さないよね。電磁機器の電磁波で、生物が持っている感覚は乱れてしまう。

渡り鳥が地磁気を感じて移動しているように、生物は地球の電磁波をキャッチして生き残ってこれた。でも今は、携帯持って耳にあてて、脳みそのすぐそばで、強い電磁波を浴びてる。方向も、感覚も、ズレるよね。正常な判断がしにくくなってしまっている。

本来は、「正しいかどうか」は頭じゃなくて、身体や自然に聞いた方がいいんです。共働学舎のフィールドは、そういう“自然の働きに則するための場”なんです。
ヨーロッパで産業革命の頃、鉄の工場で働く人が増えた。そしたら疫病が広がって、人口の三分の一が死んだって歴史もある。ところが、チーズを常食してた人たちが生き残った。これはね、偶然じゃないんです。

チーズが生命を守る理由

なぜチーズだったのか? 

それは、発酵の力なんです。火を通さなくても、発酵によって食べ物を安全に保存できて、しかも免疫力を支える栄養源にもなる。

殺菌しない牛乳は、生で出すと菌が繁殖するからと保健所から止められる。でもチーズにすると、無殺菌でも安全に食べられるようにできる。発酵でpHが下がって、病原菌が生きられない環境になるからなんですね。

消化できなくなる乳糖は、発酵で分解してチーズにはなくなってるから、乳に含まれる栄養分と免疫力を吸収することができるようになるんだよ。

山の民とチーズ文化

チーズは、もともと「山の民」の食べ物だった。

平地ではなくて、険しい傾斜地や海から遠い場所で暮らしてた人たちが、放牧して、チーズを作って生命をつないでいたんですね。

「山のチーズのオリンピック」ってのがあってね、新得農場もその条件に偶然ぴったりで、参加資格がある。「傾斜20度以上、海から30km以上、1年の半分が雪で覆われている」という条件を全部満たしてる。

海から遠いと、牛たちが食べる草も塩気がないから、山のチーズは濃い味のチーズにはならなくて、条件的には不利なんだけど、きめ細かい味が出る。繊細で奥行きのあるチーズになるんです。

炭素生命体としての人間

地球上の生命は、炭素系の生命だよね炭素は軽くて電子のやりとりをしやすい元素。それで、僕たちは、電子をうまく使うことでエネルギーを回してる。でも鉄が多すぎると、このマイナスの電子が奪われる。つまり「疲れやすくなる」し、「病気しやすくなる」。

炭素の電子の配列って知ってる?炭素の原子核の中にプラスの6つの陽子が入ってるんだよね。ということは、バランスをとるためには外側で回ってるマイナスの電子が6つ必要なんだよね。

まずSP軌道と言って、一番原子核に近いところで、電子が2つ回っていて、その外側に8個入るスペースがある。2つ使っちゃってるから、あと4つあればいいんですよ。

8個のスペースのうちの4つ、電子が入っている。そうすると、一番外側の8個のところから4つ全部取っちゃえばプラス4価、全部に電子が入っちゃえば4+4つ入るわけだから、マイナス4価なんですよ。だから、いろんな化合物を一番作りやすく、それでいて一番軽い原子が炭素なんです。

だから、効率を考えたら炭素系の生物が一番良くなるんですよね。こう見てくると、生命は、炭素を主体にしてエネルギーを回して使ってるんだということが言えます。

鉄と電波と炭素

今の社会は、鉄と電磁波に支配されていると言ってもおかしくないよね。

でも、僕らの身体は炭素でできていて、生命のリズムや発酵は、電子の働きと響きあってる。だからこそ、携帯やコンピュータで乱れた身体に、マイナスの電子と免疫力をもたらすチーズが必要なんですよ。

健康を回復し、生命が喜ぶ食べもの。それが、僕らが作ってるチーズなんだ。そういう営みを通じて、自然とともに生きる「和の国」のあり方を、今あらためて実現することが大切じゃないか、そう思ってる。

科学と自然は対立しない、むしろ響きあう

僕はね、中学校の理科って、ほんとうにすごいこと教えてるなと思ってるの。発酵の仕組みだって、pHの変化、電子の動き、そういうことをちゃんとわかっていれば、チーズづくりのすべてが見えてくる。でも、それをどう使うか、どう活かすかは、「生命」に寄り添った視点があるかどうか、が大事だよね。


次回は、「自然の中に、“答え”はある」。どのように生命を生かすか、自然とともに生きていくかを探究していきます。

宮嶋 望 プロフィール

農事組合法人「共働学舎新得農場」代表
NPO「共働学舎」副理事長

1951年、前橋生まれ、東京育ち。自由学園最高学部卒業。1974年、米国ウィスコンシン州にて酪農実習(2年間)。1978年、米国ウイスコンシン大学卒業(畜産学部酪農学科、B.S.)。

1978年、新得共働学舎設立。1998年、オールジャパンチーズコンテスト最高賞(ラクレット)。2004年、第3回山のチーズオリンピック金賞・グランプリ(さくら)。2012年、農林水産大臣賞「マイスター」受賞。

十勝ナチュラルチーズ振興会会長(1994~2005年)。十勝ナチュラルチーズ協議会副会長。チーズ・プロフェッショナル協会副理事長。ジャパン・ブラウンスイス・クラブ会長。北海道ブラウンスイス協議会会長。新月の木国際協会副理事長。

共働学舎 新得農場

北海道上川郡新得町字新得9-1
TEL:0156-69-5600(日曜を除く10:00~17:00)

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