
僕らは、自然の中で生きてるわけだから、まず自然に聞いてみる、観察してみるっていうことが大事だと思ってるんです。本当にね、自然の中に答えがあるんですよ。
たとえば、地球上では、ものは上から下に移動します。軽いものは浮きます。重たいものは沈みます。これは地球上だからなんです。
人間が何を作ろうが、どんな理屈をこねようが、自然の営みの中にすべての理(ことわり)があるんです。人間は、70年、80年生きたらもうおしまいじゃないですか。僕が言ってるのは、何百年、何千年の世界のこと。その生成流転の中で、自然は変わってないということです。
時々揺れ動くよね。温度も変わったりさ。どこかで火山が爆発したりと。だけど、自然の法則は変わってないわけ。それに基づいてやった方が、いいってことですね。
光の和音を吸収する木々

僕は、自由学園に通っていたんだけど、学校の中でほっとけば木がどんどん大きくなっちゃうじゃないですか。そこで「きこり」というグループに入ってたんです。木から落ちたら痛いからね、枝振りを見て、ここをこうやって登れば、あそこも枝切れるということを見るわけだよね。
そうすると、植物の機能、樹形というものは自然に頭に入るよね。それはパッと見てやんないと、落ちて痛い目に合うのは自分だからね。そういうことで、自然の機能、樹形を見るということができるようになったよね。
それで、自由学園の大学を卒業するときの卒論が植物生態学なんですよ。だから、どうやって森ができていくか、樹形はどうか。樹形は、太陽から光のエネルギーが来て、水分養分が下から引き上げられて木を作っていくわけですよね。その時にどういうふうにして作られるかっていうことは考えたよね。
太陽の光で、光合成が起こってるっていうじゃないですか。
太陽から届いているエネルギーで、見えるようになっているのは可視光だよね。ところがこれの全部を使ってるわけではないんですよ。可視光のエネルギー体は強すぎて、有機物の合成ができないわけ。
有機物の合成は1.24μmっていう、遠赤外線と近赤外線の間にある、もうちょっと波長の長い領域のエネルギー体を作らないと、有機物の合成ができないわけ。
可視光の領域の波長の単波、一つの波長だと有機物を合成できないんです。だから、一つの波長の2分の1、4分の1という波長を組み合わせて和音を作るわけですよ。そうして複合波になると、波長は長くなるんですね。この長い複合波を作らないと有機物の合成ができないんです。

プリズムで太陽の光を分けると7色に見えますよね、その時、葉緑素を通すと、光が欠けるんですよ。これは、そこのエネルギーを使って、有機物を作ってますよっていう証明なの。科学雑誌に書いてあって、非常にわかりやすかった。青い色を組み合わせて、ちょっと赤い色でバランスを取っているということになります。
木の葉っぱっていろんな形があって、さまざまな長さがあるじゃないですか。バリエーションが多いと、光の波長に共鳴する長さが出てくるからね。対応する波長の数が多い方が有利なわけだよね。それを選んだ植物はいろんな形してるわけよ。いろんな周波数帯の波長をキャッチできるようにね。
日本の風土と炭
日本は「火山国」ということは、陸地は火山灰土で覆われているよね。火山灰土は電気伝導度が高いんですよ。つまり、植物の生育に有利で、発酵が進みやすい。だから、食生活が豊かで発酵文化が育ちやすい環境だったと言えるんですよね。
火山灰土の電気伝導度が高いというのは、地球の内部のマグマから来ていて、鉄分が多いから。だからエネルギーが流れすぎる。早すぎる。それに、生きてる人間からマイナス電子を取ってしまうんです。だから疲れやすいんです。
それを抑えると同時に、生き物にとってちょうどいいスピードで回るようにするために、炭を埋めるんです。

なぜ、炭を使うのか。
僕たちは炭素系の生物ですよね。だから、炭素系がきちっとエネルギーを回す仕組みになっていれば、元気になるんです。なっていないと、せっかく自分たちが食べて作り出したエネルギーを周りに取られちゃうわけ。
そこで炭素とは何かというと、乾電池の中に入ってるじゃないですか。これ電池ね。単純な電池ですよね。電池って何ボルト?大きさは違うのがいっぱいあるよね。単一から単四まであるよ。でも全部1.5ボルトだよね。効率よくするために、いろいろやってるけど、基本的にプラス極は炭素でできてる。マイナス極はアルミですよ。炭素は電子を集めて、電子を流しているんです。
生き物は死んじゃったらさ、すぐ腐るよね。それは、電位がなくなるからです。つまり、電子が動かなくなるんですね。生きてるときには、1.5Vまでないにしても、必ず電位を持ってますよね。死んだら電位がゼロなんですよ。
それから、炭は電子を集めると同時に、波長変換をしてエネルギーを出している。遠赤外線で出しているわけですよ。遠赤外線でポカポカする、なんて言うでしょ?僕たちは炭素系の生物だから、遠赤外線という同じ領域のエネルギーで整合性があるわけです。
地面からそういったエネルギーが出てる空間に暮らしてると、生活するときのエネルギーロスは少ないんです。エネルギーをたくさん身体の中で回して、いっぱい出すことで生活が成り立つ、生命が保てるという空間よりも、ずっと効率よく、少ないエネルギーで生命を維持できるという。

苛立ちが少なくなって、怒りが少なくなって、安心が多くなってとね。いろんな問題を持っている人が都会で問題を起こして、だけど、ここへくるとしばらくして穏やかになっていく。
理屈的には電子が西から流れてきて、炭で集積されて、遠赤外線の力になって放出されていく。なおかつ電子的にも欠如する部分がより補填されていくということ。
気が流れないと、いい仕事はしないよね。気が滞ってるところはエネルギーが流れない。ちゃんと昔からの日本語の中にそういった表現はあるんだよね。
AI時代の人間に求められること
最近、時代が変わってきたように感じるよね。
生命を守る。免疫力を高く保つ。そのためにはどうすればいいかということの方が、経済価値より重要になってきているように感じるね。その生命はどうやったら安全に保てるか、物事がうまく回るか、土台である大地をどう工夫することによって良くなるか。
人間の便利さを求めて、携帯や何やらできてきたわけじゃないですか。そういったものの影響を物理的にきちっと把握をしておいて、生きてるっていうことはどういうことなのか?それはマイナスに働くのか、プラスに働くのか、ということを理解してないと、これから先どこへ進んでいいか、わかんないんだよね。
AIが人間の知性を凌駕してきて、99.9%、AIの方が正しいなんて言い出してる。ただ、百パーセントとは言わない。それだけコンピューターにはできないことを人間がやってるという考えはまだ残ってるんです。

それが救いだなと思うと同時に、逆に言うと「人間性って何?」ということを、ちゃんと理解しておかなきゃいけない。理屈でもってやっていくということは、科学的に全部もうAIの方がさ、優れていて便利になってるんだからね。
そうでない部分というのが、理屈ではなく、では何なんだ?というところを定義しなきゃいけないんだよね。そうすると、コンピューターが得意でないことが0.1%あるわけでしょ?それは何?
理屈で、「こうだから、こう」「だからこういうふうにやるんです」というのはロジックだよね。99.9%側だよね。コンピューターが得意ですよね。それから外れたところって何さ。
直感だよね。
なんて言うのは簡単だけど、直感でやるときっていうのは、ロジックでやってたことと違うことをやる。何かを見てこうなるよねっていうことを直感的にやってみる。その結果が、望む方向じゃなかったら、その直感は生きないよね。
望む方向になってくれたらいいんだけど、なかなかそんな便利にいかないよね。その時に、自然をよく見ておくと教えてくれるわけ。それは、生き生きと生きている側でやるとうまくいくよねっていうこと。
生きるとは“電位”があるということ
生き生きと生きてるとはどういうこと?というと、電位があるよってことなんだよね。電位は1.5Vって低くていいんですよ、炭素系生物なので。その領域で電位がある、作れるということをやってると、そこではいいことが起こるよねって、言えそうだよね。
では、どうやってこの自然というものを生かしながら、1.5Vの電位持たせるんですか?
そこで電池なんです。電池が1.5ボルトと言ってるでしょ。これと同じものを、自然界で作ればいいんです。そうすると、その周りは、電池を置いてあるのと同じ状況になるから、ことが良い方向へ回りますよってこと。電池のプラス極は炭素なんですね。炭素があると、マイナス極からマイナスの電子を呼びこんで、電気をつけたり仕事をしたりする。

それで「炭素埋設」で炭を埋めるんです。地面が通じていれば半導体だからね。電気、マイナス電子を、それに向かって送ってくる。そのエネルギーの元は太陽から出てる、という場づくりをしておくことによって、その場が、電位を持つわけ。
電位を持っていれば、落ち着いて生活をして事がうまく回る、生き生きと生きてきて、美味しくなる、ということになる。もちろん、「過ぎたるは及ばざるがごとし」で、たくさん炭を埋めればいいというわけじゃない。やり過ぎたら逆効果になることもある。そのための作法はやっぱりあるんだよね。
それに、日本では、昔から炭を使っている。正倉院とか、京都や奈良のお寺には炭が埋められているんだよ。古くは縄文時代の竪穴式住居にその原型がある。江戸城を作った太田道灌、彼は炭と塩と金粉を使ってるんだよね。
なぜかってことを考えた時に、物理的に考えれば、炭を使って電子を集める。塩でイオン分解をして、電子をまっすぐ飛ばすために、金粉を使ってた。殿様の下から、頭に向かってエネルギーを注入するわけですよ。
頭蓋骨はカルシウムでできてるから、エネルギーを逃がさないんだよね。それを下からポンッとエネルギーを注入すれば、頭が回るわけですよ。ということを日本の文化の中で知ってたということになるんですよ。その当時から、炭を使ってエネルギーを集めて、気の循環を強くするということを技術的にしていたんですよね。
連載を通して、「いのちとは何か、生きるとはどういうことか」という根源的な問いが、常に投げかけられていました。
その問いは、共働学舎新得農場の暮らしの中に、静かに力強く息づいているのでしょう。
宮嶋さんの言葉は、どれも飾りがなく、現場で生きた身体の知から発せられています。難しい言い回しをしていないのに、言葉の一つひとつが重層的な思想に通じている。それは、机の上ではなく、牛の目を見ながら、草の匂いを吸い込みながら、土を耕し、微生物と共に日々暮らしている中から生まれた言葉だからではないでしょうか。それはこの連載だけでは十分に伝えきれません。ぜひ、新特農場を訪ねて実際にそのフィールドに立ってみていただきたいです。そして、共働学舎新得農場との出会いが、一人でも多くの方にとって、「自分の生命のリズム」を思い出すきっかけになること、そして、社会の構造の中で見失いがちな、「自分であっていい」という感覚を回復する一歩となることを願っています。
宮嶋 望 プロフィール

農事組合法人「共働学舎新得農場」代表
NPO「共働学舎」副理事長
1951年、前橋生まれ、東京育ち。自由学園最高学部卒業。1974年、米国ウィスコンシン州にて酪農実習(2年間)。1978年、米国ウイスコンシン大学卒業(畜産学部酪農学科、B.S.)。
1978年、新得共働学舎設立。1998年、オールジャパンチーズコンテスト最高賞(ラクレット)。2004年、第3回山のチーズオリンピック金賞・グランプリ(さくら)。2012年、農林水産大臣賞「マイスター」受賞。
十勝ナチュラルチーズ振興会会長(1994~2005年)。十勝ナチュラルチーズ協議会副会長。チーズ・プロフェッショナル協会副理事長。ジャパン・ブラウンスイス・クラブ会長。北海道ブラウンスイス協議会会長。新月の木国際協会副理事長。
【著作】
共働学舎 新得農場

北海道上川郡新得町字新得9-1
TEL:0156-69-5600(日曜を除く10:00~17:00)












