Taguchiスピーカー 中島 学さん、田口 明容さん インタビュー

写真:(右)田口音響研究所 田口明容さん (中)タグチクラフテック 中島学氏さん (左)カムワッカ 宇井

●Taguchiスピーカーが導入されている施設

宇井:プロオーディオとして、実際に導入されている施設などのお話していただいてもよいですか?

中島:最初のうちは大型コンサート用のスピーカーですね。大きいスピーカーを何段も積み重ねてですね、ステージの両脇に置くような大型スピーカー。それから、いわゆる劇場、ホール用のスピーカー。あとは、思い出深い1つとしてみたら、長野オリンピックの時に「エムウェーブ」というスピードスケートリンクですね。スケート会場のスピーカー。空間に合わせ全部カスタムです。

宇井:今も入ってるんですか。

中島:入ってます入ってます。あとディズニーランドとかユニバーサルスタジオとかなんかもやってますね。吉祥寺・京都のアップリンク(映画館)、国立劇場(東京・大阪・沖縄)、国会議事堂(参議院)や、商業施設ではノース・フェイスBLUE BOTTLE COFFEE(右写真)にも入っていますね。

宇井:そういったお仕事って、ご縁だったり、人が運んでくるんだと思うんですけど。どんなふうに入ってくるもんなんですか。

ブルーボトルコーヒーのスピーカー

中島:今までのお付き合いやご紹介も多いのですが、実際にTagucihのスピーカーが設置されている施設でTagucihのことを知り、お問合せを頂くことも多いです。それ以外では、既存のスピーカーでは太刀打ちできないような特注スピーカー。こういうスピーカーを作りたいが、できる場所はTagucihしかないだろうって言ってご相談頂くパターンとかもありますよね。表参道ヒルズもそうでしたが、中央に長い階段があるスペースがあるのですが、そこに高さ3mぐらいの電柱のようなポールが10本ぐらい立っているんですよね。これがスピーカーなんですけど、表参道ヒルズを設計された安藤忠雄さんが最初ラフなマンガで、イメージを書かれたんですよね。でも、それを形にできるメーカーがどこにもなくて。で、相談があったんですよ。

宇井:じゃあ、色々な所でもう”無理かもしれない”っていう特殊事例がここに持ち込まれるように。

中島:そうですね。業務用スピーカーで特注でスピーカーを作れる会社は日本にはあまりないかもしれないですね。コンサートで使用されるような大型スピーカーなど、プロオーディオ業界のエンジニアの希望を形にしてきました。

写真:タグチクラフテック 中島学氏さん

●セレンディピティ・シリーズ(※1)誕生

宇井:そのような大型のスピーカーを作っていたTagcuhiが、どのような経緯でセレンディピティ・シリーズをつくるようになったのですか?

中島:プロオーディオ用スピーカーを多く作って来ましたが、プロオーディオ業界で培った技術、田口の音に対する理論や哲学を、身近なライフスタイルに合うスピーカーとして再構築したものがセレンディピティシリーズです。Taguchiらしいスピーカーを考えると360度に音が広がる無指向性スピーカーに行き着き、六面体スピーカーの「LIGHT」や反射音を拡散させるスピーカー「LITTLE BEL」を開発しました。六面体スピーカー「LIGHT」は、劇場等の建築物の音響特性を測定するための12面体スピーカーがベースでしたが、測定用スピーカーではなく、空間全体で音を聴くスピーカーとしてデザインも含めブラッシュアップしましたね。

宇井:セレンディピティ・シリーズに使われている積層面は本当に美しいですよね。

中島:美しいですね。北欧のバーチ合板という木を使ってるんですけど、積層面が綺麗なんですよね。一般的な合板って、ラワン合板っていうコンパネなんかもそうですが、積層面が荒い。 でもバーチ合板は積層幅も小さくて細かくてバームクーヘンのような見え方をしますよね。結構、北欧家具とかでは、積層面を見せている家具とかは多いです

宇井:椅子とかもありますよね。

中島:そうですそうです。

宇井:セレンディピティ・シリーズは本当に家具のようなね。それこそ楽器っていうか、スピーカーっていう佇まいじゃないですもんね。

中島:そうですね。空間にいても邪魔にならない。どこか植物みたいな感じですね。 だから特にセレンディピティ・シリーズっていうのは、和の空間にも洋の空間にも自然と馴染んでしまうような気がしますよね。余計なデザインをしてないんですよ。至ってシンプルな 形のような気がしますね。デザインし過ぎちゃうと、置く場所を選んだりする部分があると思うんですけど、どんな空間でもすっと馴染むような感じがします
「LITTLE BEL」なんかはほんと丸、三角、四角なんですよね。キャビネットが四角、上が丸で、下が三角っていう。

宇井:ほんとに完成されたデザインですよね。ただ、あの積層構造は、いつもすごく手間かかってるんだろうなと思って見てるんですけど、、、

中島:いや、手間かかります。

宇井:ですよねー

中島:1枚1枚、貼りだしてますから。

宇井:あれは圧着させてるんですか?

中島:はい。板を一枚一枚積み重ねて作ってます。

宇井:で、なおかつそれを綺麗に研ぐわけですね。

中島:パテ処理して、研いで面を出していくっていう。だからほんと手間がかかる。

宇井:昔、田口さんが冗談で「あんまり注文くれるな」なんておっしゃっていたことを思い出しました(笑)

●ライフスタイルにあったスピーカー = 音に満たされた空間

中島:Taguchiスピーカーって、多分買ってくれる方もそうだと思うんですけど、 音が出る道具としてのスピーカーを欲しいのではなくて、 家具のように寄り添える存在というか、それを空間の中にある1アイテムとしてのスピーカーを求めて購入される方が多いのかなって気がしますよね。音って、 例えば音が出る道具をスピーカーとしますよね。でも、リビングかどっかに置いた時に、 音がそこにある家具とかインテリアと繋いで、なんか深みを生むというか、 なんかそういう感じってあるじゃないですか。うん、なんて言えばいいの。うまく言えないんですけど、、、

空間の景色、空気感が相乗効果となって、そこに置かれたスピーカーも呼吸を開始して、 スピーカーと家具等を含めた空間インテリアを音が繋ぎ、 音と景色、音とその時間を深めるといった感じというか・・・

宇井:そうですね。

中島:なんかそういう部分ってありますよね。

宇井空間が生きてくるというか、つながりが生まれる。

宇井:うん、すごい豊かになりますよね。そのスピーカーから音が乗ってる時間の、なんか空間密度というか、豊かさは全然違う。

中島:そうですよね。なので、多分、Taguchiのスピーカーを求める方っていうのは、 良い音を聞きたい、もちろんそれはあるとは思うんですけど、それ以上のものを求めてらっしゃる方も多いのかなって思いますね。

宇井:このところ、新しくカフェを開くとか、クリニックを開業するとか、そういう自分が提供する空間も含めてこだわった サービスや体験を大切にしている方がご注文くださってるような気がします。

中島:そうです。一般的な指向性のあるスピーカーって、真正面から対角線上の場所が1番バランスがいいのですが、「LITTLE BEL」とか「REX060」「LIGHT」などの無向性のスピーカーっていうのはコンセプトが、 かしこまって聞くというよりも、 空間全体に広がる音を楽しむっていうものなんですよね。
例えば、その対角線上の1箇所で音を聞ける環境って、結構贅沢な環境なんですよね。
でも、家や、店舗なんか特にそうですけど、1か所にとどまって聞くってことはないじゃないですか。
それよりも、空間全体が音で満たされてる方が、実はライフスタイルにあってるのかなっていう気がします。

●後編「田口和典という特別な存在。そして今後の音空間づくり。」(近日配信)につづく

※1:セレンディピティ・シリーズ・・・コンサートや設備音響のプロオーディオ・ブランド「Taguchi(タグチ)」がリリースする、より身近なライフスタイル・スペースに向けたスピーカーシステム・シリーズ。CAMWACCAのオンラインストアでも人気の「LIGHT」や「LITTLE BEL」「REX060」「REX060-P150」などがある。

インタビュー記事

オープニングページ

前編:日本人の耳に心地良いスピーカーとは

●中編:空間を音が繋ぎ、 音と景色、音とその時間を深める(当ページ)

●後編:田口和典という特別な存在。そして今後の音空間づくり。(近日配信)

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