松木 正 プロフィール

松木 正 プロフィール

先住民の知恵と生き方から学ぶ環境教育、自分と自分をとりまく様々な生命との関係教育を軸に「マザーアース・エデュケーション」を主宰。

京都府伏見生まれ。大学在学中、自身がうつ病を克服していく過程でカウンセラーと出会い、教育の現場にカウンセリングの手法を用いることの可能性を探り始める。

YMCA職員などを経て環境教育を学ぶために渡米。全米各地で環境教育のインストラクターをする中でアメリカ先住民の自然観・宇宙観・生き方、またそれらをささえる儀式や神話に強く引かれ、サウスダコタ州シャイアン居留区に移り住みスー・インディアン(ラコタ族)の子どもたちの教育とコミュニティ活動をしながら伝統を学ぶ。

現在、神戸を拠点に全国各地にて、キャンプの企画や指導、企業研修、学校での人間関係トレーニング、また保護者に向けてのワークショップ、子育て講座、アメリカ先住民の知恵を前面に打ち出したキャンプの企画と指導、神話の語り、教育的意図をもった企画講座、個人カウンセリングなど、幅広く活動している。

著書に、ロングセラーとなった『自分を信じて生きる』(小学館) 『あるがままの自分をいきていく インディアンの教え』(大和書房)がある。

「昨日までの答えが、今日には違っている」

目まぐるしい変化をし続けている現代において、多様性が重要視されるようになっている背景には、生命の本質的な力が働いているのではないでしょうか? 多様性は、変化に適応する「生命の生存戦略」と言えるからです。 生命が次世代に生命のバトンを渡していくために、遺伝子は同じコピーをつくるのではなく、あえて分離して異なるDNAと結合し、変化するというリスクを冒します。 変化し、多様性が生まれる元には、遺伝子自体にもともと変化する性質があるのです。

自然環境の変化や、気象の変化に柔軟に対応できるように、遺伝子自体に多様性が生まれる働きが組み込まれている、もしくは、そのような遺伝子が生き延びてきたのでしょう。

変化することのリスク、変化しないことのリスク

一方で、長く同じ環境や価値観が続き、変化が少ない安定した時代には、変化することの方がリスクが大きいとも言えます。 これまで、緩やかに変化してきた時代、または、長い地球の生命の歴史の中では、穏やかな変化の時代の方が大半であったのではないでしょうか? ですから、生命は、多様性が生まれる変化の性質を備えている一方で、変化することは危ない、または、変化しない方が安全だ、という性質を強く有しています。 日常的な習慣や動きが定着し一定であるほど安定するように、変化しない方が安心で、安全が守られる、と感じることもまた確かです。

「変わり者」という、人と違ったり、変わっていることを示す言葉が、ネガティブな意味で捉えられる傾向が強いのは、これまでの日本社会が、ベースとして、変化しない方が安全だったからでしょう。

そうした「変化しない方がいい」という性質を備えた中、現代社会においては、否応なしに変化に対応していくか、もしくは、自ら変化していくことが求められます。

そもそも変化することへの恐れが前提として、ありさらに変化することで生命を失うリスクもある中で、変化しない方がより大きなリスクとなり、自ら変化していくためには、生命のはたらきに内包されている「変化していく力」、自ら分離することを選び、死ぬリスクを経て、変化することを続けている生命の働きに、ヒントがあります。

“So, be it” “そのようになれ”

これは、ネイティブ・アメリカン先住民「ラコタ族」の創世神話で語られる宇宙の始まりの言葉です。 「そのようになる力」「そのように変化していく力」が宇宙の創世に働いている、ということです。

ラコタ族のエルダーたちから神話の語りを継いで、先住民の知恵と生き方を伝えてくださっている松木正さん(マザーアース・エデュケーション)は、『人は、生命の働きに従って、その人になっていく、 その人の人生を形作っていく』ことを『生命の木』になぞらえて、示していらっしゃいます。 生命の木が枝葉を伸ばして、果実を実らせていくためには、目には見えない、根っこを養い、幹を育てていくことが必要です。

根っこを育み、幹を育て、枝葉を伸ばして創造性を発揮していく

根っこは「自己肯定感」、幹は「自己信頼感」、枝葉は「自己効力感」を表しています。

「自分は存在していいんだ」「自分は自分でいて大丈夫だ」という「自己肯定感」(根っこ)が、自信(根拠のない自信)の元になり そこから、ぐんぐん枝葉を伸ばしていくように、自分を表現していく、才能を表していくことで、「自分はできるんだ」という「自己効力感」が育ち、それによって、さらなる自信(根拠のある自信)が生まれ「自己信頼感」が養われていく・・・ このような成長のサイクルの源となる、根っこ「自己肯定感」を育むこととを始めとして、幹「自己信頼感」、枝葉「自己効力感」が育つようカムワッカは、松木さんのプログラムに取り組んでいます。

「あるがままの私を生きる」多様性が限界を突破する鍵

富国強兵、大量生産・大量消費、明確な答えがあった時代は、自分自身であるよりも、答えに合わせて生きる方が生きやすかったかもしれません。 今は、答えがどんどん変化していく時代です。 ただでさえ、変化に合わせていくことにはストレスがかかるのに、絶えず変化していく答えに合わせていくのは、非常な負荷がかかり、自分を見失っていくことにつながるでしょう。 おとなになってから、引きこもりとなったり、うつが発症することが増えていることは、このことと 関係しているのではないでしょうか? ですから、加速度的に変化が進む現代では、変化に合わせていくというより、自らの中にある答えにそって、自ら変化し、変化の波を生み出していくことが大切なのだ、と思います。

ある種の危機的な環境、非常事態とも言える現代、生命の生存戦略的にも多様であることが大事なわけですから、生命の働きに従って、自分が自分になっていくほど、多様性が生まれ、個人的にも、社会的にも、生存の可能性は高まっていくと言えるのです。 そして、その時、幸福に生きる重要な鍵として、人間関係を育む力、そして、自分で決定する力、この二つが二大要素として働いていることを大切にしてプログラムを意図し企画しています。

松木 正 インタビュー