オオシマオーシャンソルトさんを訪ねて伊豆大島へ『シホ（塩）工場見学編②』

２月の大島のオオシマオーシャンソルトさん訪問記。

前回のブログでは、日本における塩の専売と自然塩の復活のこと、そして塩づくりを一度離れて鍼灸を主として活動されていた阪本さんが、再びシホづくりを再会するに至った経緯について書きました。

訪問記の第２弾は、阪本さんが手作りで建てられているシホ工場について、詳しくご紹介させていただきます。

バックミンスターフラーとsincostan

実はオオシマオーシャンソルトさんはご自宅からシオ工場まで、建物や敷地がすべて手づくり。

阪本家の５人のお子さんは、小さい頃から整地や建物づくり、シホづくりに関すること、その他さまざなこと手伝ってきました。

現在塩づくり師を継いでいる洋未さんが高校生の頃、学校の数学でサインコサインタンジェントが出てきて、何に使うのだろう？と思っていたところ、、

お父様である章裕さんがやってきて、シホを自然のチカラで濃縮するシホドームの設計図を持ってきて、この建物を建てるのに使っている計算式はまさにこれだと教えてくれたそうです。

実際にわたしもこの建物を見ながら説明を受け、これこそ尊敬するバックミンスターフラーさんのドーム構造で、そこにはかつて学校で学んだあの式が使われていたのだ！とびっくり。

このドームは最初に建てた時から常に進化が続いています。風をより効果的にとり入れるよう構造をリノベーションして、濃縮をより促進できるようになったり、シホ工場内の蒸気を室外に排出する窓をつくったり、、

しかも、その窓は章裕さん自ら丸ノコをもち、自分たちで建てた建物に刃を入れて開口したとか！開閉する仕組みもとても工夫されています。

学びは机の上だけではなく実地のなかにある。まさに試行錯誤しながら学んでは実践されている阪本家は、生き方の先生だなあと思います。

道具も手作り

シホの元となる濃縮海水をさらに濃縮するための水槽も、それを熱するパイプも、シホをすくうための柄杓も、シホ工場にある道具は手づくり、特注、もしくは章裕さんによる改良が加えられたもの。

章裕さんはぴったりの道具をみつけては、嬉しそうに手に入れてくるんですと洋未さん。

こうして工場の隅々まで、シホにかける想いが溢れているのを感じました。

常にアップデートしていく

とても美味しいオオシマオーシャンソルトさんのおシホですが、それはシホをつくりながら常に自らの心身の声を聴き整え、微細な違いにも意識を向け、より美味しく自然なバランスへとアップデートされています。

数値だけではなく、経験と調えた自分の感覚をたよりに、最善へと変化させていく。

こうして常に、おいしいシホづくりのために意識を向け、アップデートしている阪本さんファミリー。そこに向けられている意識と行いが、この美味しいシホの素なんだと改めて感じました。

冬限定のクリスタル

にがりの入った容器のなかには、こんな結晶が。冬に見られる現象なのだそうです。

夏になると結晶は小さくなるかも、とおっしゃってましたが、今回特別に持ち帰りをさせていただいた結晶。温かなところに置いておいたら確かに小さくなりました。

シホの結晶を待つ

工場見学で印象的だったことはたくさんありますが、特に心に響いたのは「シホの結晶を待つ」ということば。自然のチカラでゆっくりじっくり濃縮して、最後に釜たきするのですが、あくまでも時間をかけてゆっくりゆっくり熱していくそうです。そして浮かんでくるのがシホの結晶。

結晶にするのではなく、シホが結晶化するのを待っている。このシホのやさしい美味しさの背景には、こういうことひとつ一つがあるのだなあと思いました。

塩工場見学と絵本

今回感動したのが最後に洋未さんが読んでくださったオリジナルの絵本です。

今となっては手に入りやすくなった自然塩。しかしつくられてくる過程の時代や背景には、様々な尽力と偶然、そして何よりあきらめずに続けていらした阪本家や塩づくりに携わった方々の歩みがあってこそ。

このシホの軌跡に触れて、あらためて橋渡しをさせて頂けていることによろこびを感じます。

袋詰め

袋詰めと出荷を担当されているのは鏡子さん。ひとつひとつ丁寧に袋に詰め、シールを貼ってらっしゃる様子をスライドで見せていただきました。

鏡子さんはわたしたちカムワッカメンバーにとってもお母さんのような存在。赤ちゃんをお腹に宿して大島に渡り、章裕さんとともにシホづくりを支えていらした鏡子さん。

手探りでいろいろあたり、大島にて自宅出産をし、いのちに根ざした暮らしを送りながら５人のお子さんを育てていらっしゃいました。

私は2人の子どもの母として毎日目まぐるしく、ドキドキキリキリしてしまいます。だから、5人も育てながら、シホづくりに尽力して、それでこんなに穏やかでかわいらしくにいられるなんて、本当にすごいです。